Works
Works 2018-11. Kanazawa×スイス工作連盟(SWB)cultural exchange
スイス工作連盟(SWB)との交流で繋がるDesignの文脈
Photo by AgeDesign
スイス工作連盟の歴史的背景
ウィリアム・モリスのアーツ・アンド・クラフツ(美術工芸)運動は、近代のあらゆるデザイン運動に何らかの影響を及ぼしています。モリスの運動に影響を受けたドイツの建築学者ヘルマン・ムテジウスらにより、1907年にドイツ工作連盟が設立、1910年にオーストリア工作連盟、1913年にはスイス工作連盟が設立され、ヨーロッパ各国で産業を前提とする芸術のあり方が模索されていました。そしてデザイン業界でもっとも象徴的な出来事として1919年には、バウハウスがドイツに設立されました。
世界情勢が不安定化するにつれ、バウハウスは1933年には閉鎖。ドイツ工作連盟はヒトラー政権によって解散を命じられ、第二次世界大戦後にようやく再建されるに至りました。
しかし、各国の工作連盟運動が世界情勢に翻弄される中でも、スイス工作連盟(以下SWB)は戦争中もずっと活動を続け今に至る世界を代表する工作連盟の一つです。
SWBは、建築家・企業家・デザイナーなどを集めた協力組織であり、単なる作家団体ではありません。様々な分野において、デザインを共通の課題とする一つの強力な協議体なのです。またSWBの特徴として、「民間団体であるSWBの公共性を認めて、スイス政府が助成金を出している」、「SWBが民間団体であるが故に、広汎なデザイン運動の展開が可能」、「SWBがデザイン教育という面に積極的な関心を示している」という3点が挙げられます。これらの点により、スイス工作連盟はより多角的な活動を続けることができ、デザインを一層発展させているのです。
今回、そのSWBのメンバーが金沢を訪問するにあたり、SWBのメンバーの一人、Ann Suさんから、日本のクリエイターとSWBの交流を打診いただき、国境を超えたデザイン交流に花を咲かせましょうということで、趣都金澤やJIDAなどで交流のある金沢在住のデザイナー5名と、SWBから6名の濃密な交流会を開催した。
SWBの一行は、金沢21世紀美術館を訪問の後、鈴木大拙館へ向かう。ここでは、同館の猪谷さんにご対応いただき、鈴木大拙の哲学についてレクチャーを受けた後、橋場町のリノベーションホテルHACHIの1Fにあるレストランa.k.aに移動し、18:30から交流会が始まった。こうして金沢・SWB相互のクリエーションのプレゼンで交流が始まった。
プレゼンテーションに聞き入るSWBのメンバー
気が付けば、準備された食事に手をつけることすら忘れ飛びかう質問を交えながら、あっという間に21時を迎えることに。
そこからa.k.aの美味しい食事に舌鼓を打ちながら、更に濃密な時間を過ごした。
今回、建築からプロダクトまで様々なクリエイターのプレゼンを聞き、スイスで生まれフランスで活躍した建築家ル・コルビュジエ(Le Corbusier)の近代建築に象徴される思想と、日本の禅の思想の親和性を痛感した。
Photo by AgeDesign
この交流を通じて、Designの文脈が19世紀にヨーロッパで始まり、20世紀にバウハウスの登場により世界中へ拡大していった文脈を再認識できることになりました。今回企画したこのSWBとの交流会は、AgeDesignにとっても非常に価値のあるイベントとなった。
また、インダストリアルデザインに身を置くものとしては、このイベントで見聞きした異国の研ぎ澄まされたデザインを目の当たりにし、本来日本らしい研ぎ澄まされたデザインが減り、華美なデザインが増えることによる日本の美学が失われる危機感も感じ得た貴重で濃密な時間だった。
Kanazawa×SWB cultural exchange
2018-11.15
Kanazawa, Ishikawa, Japan
writing / photo / Yohei Inagaki
planning AgeDesign