top of page

Works

Works 2023-07.   KOGEI Rubiks

KOGEI×Rubik'sに込めた思い 

工芸ルービック  匠三弾 金沢箔 金箔

工芸ルービックも匠三弾を迎え、メガハウスさんとの打ち合わせを経て、日本を代表する伝統工芸「金沢箔 金箔」バージョンに着手しました。制作にあたっては金箔製造のトップシェアを誇る今井金箔さんの協力を得て、打ち合わせや試作を重ねました。新しい素材・限られた設計条件の中、かなり早い段階からいくつかの課題にぶつかることになります。

金箔の選定

ルービックキューブは6面あるので、当然6種類の箔を選定しなければなりません。金沢箔には金箔や銀箔、プラチナ箔など、様々な箔がありますが、私たちがこだわりたかったのはやはり金箔。金箔の煌びやかさを全面に押し出したかったのです。金箔は合金率の違いによって色味や風合いが異なりますが、できるだけ金の含有率が高く、且つ色の判別がかろうじてできる6種類を選定しました。

works2307_t03.jpg

金箔パネルの実現

既存のパネルの表面に金箔を貼るだけなら話は早いのですが、ルービックキューブは触れて楽しむもの。いかにして金箔の魅力を最大限に引き出し、且つ金箔が剥がれないような仕様にするかは困難を極めました。

パネルの表面に金箔を貼るとなると、触っても金箔が剥がれないようにかなり厚めのコーティングを施さなければなりません。そのような厚めのコーティングはつやのある被膜ができてしまい、本来の金箔の輝きとは違うものになってしまいます。この工芸ルービックにおける狙いは、「ルービックキューブを通して、本物の工芸の素晴らしさを広く知ってもらうこと」ですので、できるだけ金箔本来の輝きを損なわないような仕様を模索しました。

そうして試行錯誤を重ね、ようやく「透明アクリルパネルの内側に金箔を貼る」という着地点に辿り着きました。既存のパネルではなく、透明アクリルパネルを一から設計し、その内側に金箔を閉じ込めるというものです。とても精緻な加工になる為、専門業社の協力を得て専用のアクリルパネルの開発を進めました。その薄さはわずか1mm!精密な加工により、ルービックキューブのコアにぴったりとはまるアクリルパネルが完成しました。

 

ここから箔押し職人さんが金箔を貼っていくわけですが、約1万分の1〜2mmという極限まで打ち延ばされた金箔をこの小さなアクリルパネルに貼っていくという息を飲む作業は、まさに職人による匠の技です。しかも、この小さな面積でも金箔が感じられるよう、あえて箔皺が出る貼り方をしていただきました。ひとつひとつ、厚さわずか1mmのパネルの小口にまで妥協を許しません。
ここでも僅かな箔の剥がれなどが無いように、箔押し職人による数回の試作を経て、金箔の皴感や表情を残したままの美しいパネルが実現しました。

 

works2307_007.jpg

このように、いくつもの難題を乗り越えて金箔のルービックキューブが完成しました。透明アクリルパネルの内側に金箔を貼ることで、金箔に直接触れることなく安心して使っていただける品質を確保しました。内側に閉じ込められることで、金箔の繊細で上品な輝き、金箔ならではの奥ゆかしさがより表現できたのではないかと思います。

今回も、メガハウスさんの工芸に対する理解のおかげで金沢箔 金箔が実現しました。縁付き金箔という残すべき伝統的な匠の技をはじめ、工芸の素晴らしさ、金箔の美しさを一人でも多くの方に理解いただければと思います。

 

制作にご協力いただきました、今井金箔さん本当にありがとうございました!

 

[インタビュー]
伝統的な製法を未来に継承するべく様々な取り組みに挑みつづける
金沢箔の老舗「今井金箔」の志 

works2307_003.jpg

今井金箔の店舗内でインタビューの様子

Photo by AgeDesign

約400年の歴史を継承してきた、石川県金沢市の伝統工芸、金沢箔。

今回、「工芸ルービック 匠三弾」である「金沢箔 金箔」を手掛けるにあたり、制作にご協力いただいた「今井金箔」代表取締役の今井康弘氏と、企画担当の今井由佳氏にお話を伺いました。

 

伝統工芸とは、そこにある背景とは、そしてこれからの伝統工芸とはー。 

 

金沢箔の現状と、その中で今井金箔が果たす役割とは、率直にお話いただきました。

 

―まず、伝統工芸の金沢箔について、簡単にご説明お願いします。

金沢箔は、江戸時代の前から作られており、京都の箔職人が金沢に移住してこられて始まりました。

今現在も昔の作り方のシステムが残っています。箔屋には、澄屋、箔屋、箔問屋と3つあり、それぞれ分業制よって作られている仕組みが今も受け継がれています。

伝統工芸品とは、経済産業省の方で指定されています。その中で材料として指定されているものは非常に少なく、その一つが金沢箔です。

― 今井金箔について教えてください。

明治31年に製箔業を創業しました。重要文化財の修復に使われる箔をはじめとし、一般の方が使用される箔にいたるまで、全国のお客様に箔を提供させていただいております。

―金沢箔を継承することについて、どのようにお考えでしょうか?

日本の金箔はほとんど金沢で生産されています。これが途絶えると様々な伝統工芸品に使われている箔の供給が全て止まってしまいます。

伝統的な製法を後世に伝えていくために、箔づくりの職人の技術を途絶えさせず、後進の育成が非常に大きな役目だと思っています。

そのため、弊社では、業界唯一となる自社での一貫生産体制を構築し、組織として金箔製造の技術やノウハウの継承に取り組んでいます。

箔問屋なので外部に依頼して金箔を製造していただき販売をしておりましたが、内製化してさらに金箔を作ることにより、金箔づくりの製造技術の継承をするための取り組みを一層強化しました。

works2307_001.jpg

今井金箔の今井社長

Photo by AgeDesign

―金沢箔の現状の課題、今後の取り組み等について教えていただけますか?

箔の需要としては、生活様式の変化によりどうしても減少していくのが目に見えています。これをいかに職人の仕事を維持していくかが今井金箔の課題です。そのために新たな需要の開拓をしていく取り組みを行っています。

― 今井金箔として大事にしていることは何ですか?

弊社としては、「箔材料」を非常に大事にしておりますので、金箔の形態をより使いやすいものにし、どうしたらより多くの方に使っていただけるかを考えながら商品開発をしております。

―改めてですが、金箔の魅力を教えてください。

もともとは、高価な金を薄く延ばしてものに貼り付け、少量の金で高級なものをつくろうというのがスタートだったと思います。また、薄く延ばしたことによって、また塊とは違った繊細な輝きを放つことも大きな魅力だと思います。昔は明かりとしての役割もあって利用されていたという話もあります。

金箔は約1万分の1mmの薄さなので、ライトに金箔を当てると青く透けたような色になります。
縁付は和紙の表情を持つ落ち着いた仕上がり、断切は放射状の延ばした跡がみられます。
縁付も断切もそれぞれ完成した時の表情が違うので、用途によってお客様が使い分けられます。

works2307_004.jpg

広物帳から箔をうつし、切りそろえる縁付金箔

Photo by AgeDesign

―「工芸ルービック 金沢箔 金箔」の完成品はいかがでしょう?

GO FOR KOGEI | Photo by AgeDesign

色の違いが微妙なので、揃えるのが難しいですね(笑)。昔に比べてまわしやすくなっていますね。

 職人が模索して、箔らしさを感じさせる箔皺がうまく出てよかったです。

今回試行錯誤を重ね、アクリルの透明パネルに箔を裏貼りしたことで、箔らしさがみえるタイルに仕上がったと思います。斜めから見ても光を通す金箔本来の輝きがみられるようになっています。表面に貼ってコーティングをかけると箔の光沢ではなく、コーティングのつやとなり、フィルターがかかったようになってしまうので、斜めからみたら被膜があるようにみえてしまいます。

でも金箔はコーティングしないと触るたびに剥がれていきますので、今回のアクリルパネルに裏貼りするという仕様はよかったと思います。

works2307_002.jpg

Photo by AgeDesign

―最初にルービックキューブの依頼を受けてどう思いましたか?

世界中で親しまれているルービックキューブに金箔を貼るということで、今まで金箔を使ったことがない方にも興味を持っていただける良い機会だと思い、とても新しい試みだと思いました。

―今回制作にあたり、特に困難だったところを教えてください。

パーツが細かいというところは金箔を貼ることが非常に難しいと感じました。また、6面あるため、どの箔を貼ると色の違いが出せるのか検討するのが大変でした。

金箔のもつ上品な輝きや温かみのある色、また金・銀・銅などの合金率による微妙な色の違い、さらに箔らしさを感じさせる皺のある箔押し技術などを楽しんでいただければと思います。

works2307_005.jpg

打合せを重ね、6面に使う金箔の種類を決めていった

Photo by AgeDesign

works2307_006.jpg

Photo by AgeDesign

ありがとうございました。

お話を伺って、金箔だけにとどまらない、金沢箔に関する全て、日本の伝統工芸全てに対する責任感の強さが、とても印象的でした。

今後も今井金箔さんの金箔技術継承への取り組みを微力ながらでも応援していきたいと思いました。
 

工芸ルービックキューブ 金沢箔 金箔
パネルができるまで
works2307_008.jpg
株式会社 今井金箔

明治31年創業の金箔製造卸であり、国産金箔のほとんどが製造される金沢市において、トップシェアを誇る企業です。金箔を製造する職人を束ねる問屋として仏壇・仏具メーカーの他、工芸品メーカーに販売するだけでなく、職人が減少する業界において、業界唯一となる自社での一貫生産体制を構築しており、組織として金箔製造の技術やノウハウの継承に取り組んでいます。店頭ではタンブラーや金箔ソフトなど幅広い箔貼り体験メニューを展開。金箔を身近に感じてもらえるように自宅で簡単に使用できる金箔アイテムを開発し、金箔の新しい魅せ方や用途を追求しています。

works2307_009.jpg

Photo by AgeDesign

rogo1920x680.jpg
works2307_010.jpg

工芸ルービックキューブ 金沢箔 金箔
セット内容 ルービックキューブ本体、専用台座BOX(シリアルナンバー入り・折りたたみカバー付)、

金沢箔 金箔ガイド、取扱説明書
サイズ・重さ 本体 W57×D57×H57(mm)・約91.0g
価格 300,000円(税込・送料別)
受注期間 2023年07月07日(金)10:00~2023年08月31日(木)15:00
お届け時期 2023年12月から順次発送

※製品仕様は開発段階のものであり、サイズや重量や色味が予告なく変更する場合があります。
※当製品は受注生産商品です。発送は日本国内に限らせていただきます。
※当製品はプレミアムバンダイで販売いたします

発売元/株式会社メガハウス
〒111-0043 東京都台東区駒形2-5-4
www.megahouse.co.jp/


企画・デザイン/エイジデザイン株式会社
〒920-0962 石川県金沢市広坂1-2-32 北山堂ビル4F
www.agedesign.co.jp/


協力/株式会社今井金箔

〒920-0968 石川県金沢市幸町7-3

https://www.kinpaku.co.jp/

RUBIK’S TM & © 2023 Spin Master Toys UK Limited, used under license. All rights reserved.

​工芸

工芸とは、美的価値をそなえた実用品を作ること※1であり、中でも長年受け継がれている技術が用いられた工芸品のことを伝統工芸といいます。
日本の伝統工芸品の生産は1984年にピークを迎え、バブル崩壊後の経済低迷や安価な海外製品の台頭、ライフスタイルの変化などで年々減少し、現在はピーク時の5分の1といわれており※2、従事者の高齢化や後継者不足など、課題も山積しています。
しかし、近年、日本文化を見直す動きや、モノの本質的な価値を見出す本物志向の考え方も広がりを見せ、現代のライフスタイルに合わせた斬新な商品も数多く誕生、人気アニメとのコラボレーションや、工芸品の海外展開も高評価を得ており、新たな顧客層も獲得しています。
また、日本に各地に根付いている伝統工芸は、今や地方創生の要ともいえる産業であり、文化であり、地域と密接な関係と文脈を持った最強のコンテンツの一つといえます。地方創生施策として、2020年に東京国立近代美術館工芸館が工芸のまち・石川県金沢市に移設され、「国立工芸館」として新たにスタートすることが大きな話題となり、「工芸」への関心はますます高まっています。
時代とともに変化して受け継がれてきた確かな伝統の技術は、新しい感性を加えた「現代日本のものづくり」として改めて注目されています。

※1 広辞苑より
※2 一般財団法人 伝統的工芸品産業振興協会HPより

works2307_011.jpg
金沢箔の歴史

金沢箔は金箔や銀箔・プラチナ箔等の様々な種類があり、国内の金箔のほとんどが金沢で作られています。

金箔が金沢でいつごろから作られたのかは定かではありませんが、文献上では、文禄2年(1593年)加賀藩祖・前田利家が豊臣秀吉の朝鮮の役の陣中より、国元へ金・銀箔の製造を命じる書を寄せていることに始まります。以来、加賀藩の産業振興策や、寺院の建立や仏壇・仏具の必要性等から金箔の製造は盛んになっていきました。金沢で箔の製造が発展した要因の一つに、水質に恵まれ気候が箔の製造に適している風土的要因が挙げられます。

しかし17世紀末、幕府は江戸箔を庇護し、江戸・京都以外の箔打ち禁止令が出され、金沢では箔の製造ができなくなりましたが、加賀藩の細工所ではひそかに箔の打ち立てを続けられたていたと言われています。

明治に入り江戸箔の消滅に伴い、金沢箔は全国に生産や販売ができるようになり、発展していきました。

1915(大正4)年、金沢の箔職人が箔打ち機を開発し生産効率は飛躍的に向上、1932 (昭和7)年には、兵庫県名塩産の手漉き和紙を使っていた箔打ち紙の製造に石川県能美郡川北村(現在の川北町)で成功するなど製箔道具が充実していきました。

しかし第二次世界大戦に突入し、箔の生産が困難となり終戦後、徐々に金箔製造が復活。

高度経済成長における社会の近代化は公害を生み、騒音規制法が1968(昭和43)年に施行、金箔製造の箔打ち機の振動が法の対象となり、対策として箔団地の造成・移転などにより職人の作業形態も多様化していきました。

1977(昭和52)年には、日本の伝統的工芸品産業の用具材料部門において初の通商産業大臣指定(伝統的工芸用具・材料に指定されているのは、現在、金沢箔(石川県)、庄川挽物木地(富山県)、伊勢形紙(三重県)の3つのみ)を受けるなど、昭和から平成にかけて箔の生産金額は上昇していますが、それ以降の長期的な不況により、箔の生産は減少傾向にあり職人の数も減ってきました。

このような中、2009(平成21)年に「金沢金箔伝統技術保存会」が設立され金箔の技術を次の世代へ伝承する動きも興り、約400年間、絶えることなく受け継がれてきた金沢箔は、現在でも多くの工芸品や美術品に欠く事のできない装飾素材として発展しています。

金箔について

わが国において金‧銀箔が、いつ頃から作られたかは明らかではありませんが、数多くの文化遺産の中に、その実証を見ることが出来ます。古くは、天平勝宝4年(752年)大仏開眼供養が行われた東大寺大仏殿の 鴟尾も金箔によって燦然と輝いていたと伝えられています。歴史と文化を象徴する寺院建築や仏像彫刻、調度品など美術工芸品等々、金箔はその芸術性を高めるための重要な資材としての役割を果たしてきました。さらに、日本の建築、家具、調度品、器物の多くが木を素材としていることから、漆とともに金箔が、それらの文化遺産の耐久性を高め、わが国の重要文化財を現代に伝えるための大きな役割を果たしてきたものと高く評価されています。

金箔は、金を約1万分の1~2㎜まで薄く打ち延ばした箔片で、建築、美術、工芸など様々な分野の装飾素材として製造されています。

厚い方が金の量が多く価値の高いと思われがちですが、金箔においては薄さが重要になります。極限の薄さまで打ち延ばすことで、剥離・剥落しない接着度が得られ、さらに金の特質(色・つや・輝き)が最大限に引き出されるのです。

また、このように極限の薄さまで延ばすには、卓越された職人技と、金箔づくりを左右する紙仕込み、金箔づくりに適した気候などあらゆる要素が必要とされています。

 

金箔は製法によって大きく2種類に分けられます。近年では効率的に量産できる「断切金箔」が主流ですが、約400年以上の伝統がある製法「縁付金箔製造」においては2014(平成26)年、文化庁より国の選定保存技術に認定、2020(令和2)年には「伝統建築工匠の技」のひとつとしてユネスコ無形文化遺産に登録されています。

日本の伝統文化や文化財を守るためにも、この縁付金箔の伝統技法を継承していかなければなりません。

● 縁付金箔の工程の詳細はこちらをご覧ください →https://www.kinpaku-imai.jp/hpgen/HPB/entries/13.html

 

参考資料

金沢市立安江金箔工芸館 (kanazawa-museum.jp)
金沢金箔伝統技術保存会 (entsukegoldleaf.jp)
石川県箔商工業協同組合 (hakukumiai.jp)

KOGEI Rubiks Kanazawahaku Kinpaku

2023
Japan Tokyo & Kanazawa
Publisher Megahouse Co., Ltd.
Planning / Design AgeDesign Co., Ltd.
Cooperation Imaikinpaku Co., Ltd

bottom of page