AgeDesignがオフィスを構える、金沢市広坂では、数年前から「工芸とアートの街」として新たなプロモーションを展開しており、弊社もそのまちづくりのお手伝いをさせていただいています。
デザイン思考でまちづくりを考える
デザインは、単にロゴやパッケージをカッコよくするだけではだけでありません。形や色を整えるだけでなく、ものごとの本質をとらえて設計することがデザインなのです。
昨今デザイン思考による「デザイン経営」が叫ばれていますが、弊社も「デザイン経営」(※)を企業様に向けて発信し、ブランディングなどのお手伝いなどをさせていただいています。
「デザイン経営」は企業経営だけに当てはめるものではなく、今回の広坂の「まちづくり」にも通ずる概念です。
例えば、現状や考えを見える化(可視化=デザイン)することで、情報共有できたり、意見交換のきっかけとなったりと、様々な課題解決に向けた糸口となります。
まさに、デザイン=課題解決であると言えます。
弊社は「デザイン経営」をもとに広坂振興会と一緒になって「広坂」プロモーションを考えています。
(※)デザイン経営とは「デザイン経営」とは、デザインの力をブランドの構築やイノベーションの創出に活用する経営手法です。その本質は、人(ユーザー)を中心に考えることで、根本的な課題を発見し、これまでの発想にとらわれない、それでいて実現可能な解決策を、柔軟に反復・改善を繰り返しながら生み出すことです。経済産業省・特許庁は、「産業競争力とデザインを考える研究会」の議論の結果、2018年5月に報告書『「デザイン経営」宣言』を取りまとめました。
これまでの広坂プロモーションの取り組み
「広坂」は、金沢市の兼六園や金沢城公園、金沢21世紀美術館に隣接する、県内を代表する観光地でありながら、近隣の片町や香林坊、東山などに比べ知名度が低いことが直近の課題でした。
そこで、まずはアウターブランディングから取り組みました。
2020年度、コロナ禍による非常事態宣言が続くさ中、「広坂」の認知度アップを図るため、ガイドマップを作成しました。また、SNSの活用を推進すべく、Instagramの公式アカウントを開設しました。
2021年度、SNSの継続した活用をすべく、YouTubeチャンネル開設し広坂の紹介動画を作成しました。とFacebook公式ページ立ち上げ、SNSと連動した「広坂」の魅力も並行して発信して行きました。これにより外部に向けたアウターブランディングの環境は整いました。
インナーブランディングの実体化
アウターブランディングの取り組みは、プロジェクトメンバーの一体感を生み、インナーブランディングも同時に取り組んだことになりました。
2020年当初は実質4名でスタートした広坂の活性化プロジェクトですが、2022年の本年度は7名にメンバーが増えました。実際の活動をすることでこのようにメンバーが増えていくのは、インナーブランディングが少し強くなった結果ではないでしょうか。このメンバーによるワークショップの開催、YouTubeの広坂紹介動画拡充、2020年発刊のガイドブックリニューアル、サイン計画の見直し案、SDGsの取り組み提案、空き店舗活用案や、グッズ販売して収益化・広坂プロモーションの継続に必要な資金を生み出す仕組みづくりなど、様々な提案を、広坂振興会とともに協議してきました。
限られた予算で効果的なプロモーションをするにはどのようにすべきか、広坂振興会で話し合いを重ねながら企画をブラッシュアップしていきました。
実行計画が遅れていた中、中小企業庁『がんばろう!商店街事業』を受託しました。
ガイドマップは、情報をアップデートし、広坂の店を歩いてまわり直接声をかけてお願いするなど、地道な活動のかいあり、掲載店舗を増やすことができ内容もより充実しました。
また、メインストリートには18本の街灯に、この地を訪れた方が「広坂」だと視覚的認識できるバナーも設置しました。荒天時には外れてしまうパプニングもありつつ、それらを通じて振興会会員同士の絆はより深まりました。オンライン全盛の時代ですが、こういったリアルな体験の積み重ねが、組織としての力になると確信しています。
上:広坂のメインストリートの街灯にバナーを設置する様子 左:リニューアルされた広坂ガイドマップ 真ん中:香林坊から望むバナー設置後の広坂メインストリート 右:広坂ARフォトスポットのDM
DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した新しい街づくりへの挑戦
広坂は一直線だが見通しが悪く、商店街マップやサインも無いため、度々看板を設置するサイン計画案が度々上がっていました。但しコスト面やメンテナンス面、中心市街地の景観条例などの課題が多く実現されませんでした。そこで今回、リニューアルしたガイドマップとともに設置に場所を取らないARを活用した広坂フォトスポットを新たに考え、広坂を訪れた観光客が広坂で周遊してもらうことを目指して、挑戦することになりました。
弊社は、もともとインダストリアルデザインを得意分野としており、3D設計を手掛けています。このものづくりの技術を、街づくりにも活かすべく、3Dオブジェクトは「金沢らしさ」「工芸とアートの街広坂」らしいもので案を出し合い、試行錯誤の上3D化し、広坂AR
フォトスポットを12種類作成しました。
好評だった2020年発刊の広坂ガイドマップをリニューアルし、そこにARフォトスポットを紹介したポストカードを挟んで配布しました。
しかし、もともと観光客の少ない1月の実施、そして大雪なども重なり結果として話題性はありましたが想定以上のアクセス数は無く課題を残しました。まさにここからが、デザイン経営におけるアジャイル型の取り組みで乗り越えていくステップになると確信しています。
InstagramにUPした「広坂ARスポット」の記事
デザインのチカラで、生まれた様々なコミュニケーション
2021-2022年と、SNSを活用した広坂のプロモーションを推進し続けたことで、お客様とのコミュニケーションが生まれました。また、SNSを通じて近隣観光地との交流や、広坂振興会会員同士の気軽なコミュニケーションが生まれました。2020年に4名だった主要メンバーが、2022年には7名に増え、広坂のまちづくりにかかわる人が増えるきっかけとなりました。「人を増やす、まきこむ」これはまさに「デザイン経営」です。SNSの登録者数や再生回数が増えることも大事ですが、弊社の役割のひとつは、かかわる人を増やすこと、まきこむことです。
主体性をもった人々が集う振興会が主体的に行うまちづくりは、今後もトライ&エラーを繰り返し改良しながら、継続していくことこそが広坂のプロモーションにとって重要であると弊社は考えており、今後も継続して声掛けなども積極的に行っていきます。
課題解決に向けた実行力は、継続する力
以前の広坂振興会は、課題がわかっていても解決策の実行に至りませんでした。これまで何度もワークショップを積み重ね、ある程度の課題や方向性などは見えているにも関わらず、なぜ解決策を実行できなかったのか。
それは、振興会の取り組みが基本的にボランティアのため継続性がなかったことに起因します。また、少子高齢化が主な問題としてあり、何年も一貫した活動を続けることが困難でした。
今回のような受託事業の場合、代理店など専門業者に丸投げしてしまうことも多いです。代理店によるプロモーションは一時的で単発のパッケージモノが多く、それらを継続させようとしても、その街には合っていなかったり、継続するには別途膨大な費用が発生し、継続させることが難しいものだったりと、様々な問題があります。
今後もこれらの課題を打開すべく、「デザイン経営」によるまちづくりを積み重ねながら、地域に根付いたデザイン事務所として、広坂振興会の一員として、主体的にまちづくりに取り組んでいきます。
今後の活動もまた、このWorksで紹介させていただきます。
Promotion of HIROSAKA
2022.12-2023.01Kanazawa, Ishikawa, Japan writing / photo / Yohei Inagaki planning AgeDesign